大学eラーニングの今
第1回 熊本大学大学院「教授システム学専攻」
-日本初のeラーニングによるeラーニングの専門家養成大学院-
大学では、より多様で効果的な教育を実現しようとeラーニングが広まっている。企業ではeラーニングは企業内教育のツールにとどまらず、情報を高度に活用して事業を進め、グローバルに協働するためのツールとして使われている。しかし、日本ではeラーニングの専門家は少なく、人材育成の態勢も整っていない。その現状を打破すべく、熊本大学大学院の教授システム学専攻は、eラーニング専門家を養成する日本初の大学院としてスタートした。インストラクショナルデザイン(ID)を活かした100%eラーニングの新しい教育体制を組み、知識情報社会を支える人材育成に取り組む専攻長で、日本のIDの第一人者の鈴木克明教授に教育方法やねらいを聞いた。
フルeラーニング
熊本大学大学院の教授システム学専攻は2006年4月に開設された。日本の高等教育や産業界の教育訓練のeラーニングに貢献する専門家の養成を、100%eラーニングで行うことを目指している。初年度は37人が志望して15人が入学、07年度は34人が志望、19人が入学。このほかに科目等履修生が初年度22人おり、人気、関心は非常に高い。
教授システム学専攻では、熊本のキャンパスに1度も来ないで履修、修了できる態勢を目指している。修士課程の最終試験の口頭試問を除いて、原則としてeラーニングで行い、学生と教員、学生同士のインタラクションも極力オンラインで行っている。
eラーニングの専門知識、技能を学びたいという需要は東京を中心に多くあったが、それに応える教育機関はなかった。しかし熊本大学では、それをeラーニングで提供することによって、東京から遠く離れていても需要を受け止めることが出来た。オンラインを使ってメディア教育開発センター(NIME)の研究者や実務家など首都圏にいる専門家の授業を行うこともできる。
教授システム学専攻の学生は企業に勤めている人が3分の2、大学、高校の教職員が3分の1弱で、東京在住者が多い。「一番乗りしたのは正解だった。レベルの高い学生が集まった」と鈴木教授は言う。教育内容は「フルタイムの学生と同じ」で、「それだけの内容を、働きながらこなしている。すごいと思います」と舌を巻くほど、意欲は高い。学生の所属する企業の期待も大きく、学費を会社が持つ企業、業務時間内に勉強することを認める企業がある。職員を送り込む大学もある。鈴木教授は「教育内容の専門家である教員と、インストラクショナルデザインの素養がある事務職員、そしてeラーニングの専門家で協働してeラーニングを行うというのがわれわれのモデルだから、その一端を担う教職員が学びに来るのはうれしいこと」と言う。教授システム学専攻は、新たなフルeラーニングで新たな教育の方法を示し市場を開拓した。


