学習イノベーション

eラーニング2つの誤解

特定特任教授 平野秋一郎


 大学のeラーニング活用の機運が高まっている。少子化、学力低下などの問題の解決に対応するため、導入、活用する大学が増えているが、特徴的なのは、eラーニングの経験のない大学が取り組み始めていることである。今、大学が抱える問題が従来の教育システムだけでは解決が難しいこと、新しい教育・学習の方法が求められているのだということを実感する。
 放送大学では、大学などにeラーニング教材を提供する「UPO-NETプロジェクト」を行っている。担当者からeラーニングの進め方などについてさまざまな相談や質問が寄せられる。関心の高さを実感するが、同時にeラーニングへの誤解や反発がまだ多いということを感じる。
 eラーニングが広まって来た今でも根強い誤解に「eラーニングで教材を提供すれば学生は勉強する」と「コンピュータに教育はできない」の2つがある。この誤解は1つのことの裏表で、eラーニングに教員が関わらない、あるいは関われないという思い込みから生じている。そこから「eラーニングを導入しさえすれば教員の負担軽減、人件費の削減になる」という期待が生まれ、一方で、「対面授業こそが教育だ」「紙とペンで学び、問題を解くから身につくのだ」という反発が生まれる。
 eラーニングは魔法のツールではない。教員のサポートをしたり、教育方法の可能性や学習方法の選択肢を広げしたりすることができる道具に過ぎない。どんな目標で、つまり何を実現するためにeラーニングを使うのか、そのためにeラーニングのどの機能をどのように使うのかが明確でないと、eラーニングはうまく行かない。
 「基礎学力の向上」「学習機会と学習時間の増大」「学びやすい環境の実現」「学習者の選択肢の拡大」「教育の質の向上」「コミュニケーションの促進」「生涯学習社会への対応」などさまざまな意図、目的でeラーニングが実施されている。それを成功させるには、指導方法の研究・改善、学習支援の工夫、抱える課題の明確化など、教員の工夫や努力が欠かせない。
 「それでは教員の負担は増える、eラーニングなんかいらない」と言われるだろう。しかし、eラーニングシステムには、試験問題や資料の印刷、配布、回収などの手間を省く、コミュニケーション機能で学生との連絡を密にするなど負担軽減の方法はいろいろあり、それによって浮いた時間を指導に生かすことができる。eラーニングで教員は何もしなくてよくなるのではなく、やりたいことに集中できるようになるのだ。2つの誤解がなくなれば、もっとeラーニングの可能性は広まるだろうと思う。
 「UPO-NETプロジェクト」では、教材を提供するだけでなく、利用大学に活用方法、成功事例や成功事例の報告を求めている。現場の生の情報を収拾、蓄積し提供することが、多くの大学のeラーニング活用に役立つと考えるからだ。



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